AIによって人類は滅亡する②

AIによって人類は滅亡する
二〇四一年、人類は核融合発電を実用化した。長い間、それは夢だった。太陽が何十億年も燃え続けているのと同じ仕組みを、地上で再現する。燃料は海にほぼ無尽蔵に存在した。二酸化炭素をほとんど排出しない。燃料の輸送も必要ない。廃棄物も、従来の原子力発…

二四五一年。

人類は地球へ帰還した。

二十二世紀の初頭。

地球上の人類は滅亡した。

核融合。

AI。

巨大な計算施設。

そして、増え続けるエネルギー消費。

人類は熱によって地球を埋め尽くした。

しかし、すべての人間が地球にいたわけではなかった。

月。

火星。

軌道上の居住施設。

そこには、わずかな人間が残っていた。

彼らは地球を見ながら生きていた。

地球はまだ青かった。

しかし、その青い惑星には誰も住んでいなかった。

地球上の文明は止まらなかった。

発電所も。

計算施設も。

自動工場も。

冷却設備も。

人間がいなくなっても、機械は動き続けた。

そして、やがて止まった。

自らの熱に耐えられなくなった。

百数十年が過ぎた。

地球の温度は少しずつ下がった。

海は再び青くなった。

大気も落ち着いた。

都市は植物に覆われた。

人類は考えた。

もう一度、地球へ帰ろう。

二四五一年。

最初の帰還船が地球へ降りた。

人類は久しぶりに地面を踏んだ。

土があった。

水があった。

海があった。

空気があった。

地球は、人類がいなくなったことで再び住める場所になっていた。

人類は文明を作り直した。

しかし、一つだけ問題があった。

エネルギーだった。

人類は、もう一度エネルギーを使わなければならない。

発電。

輸送。

農業。

医療。

通信。

そしてAI。

人類は前回の失敗を知っていた。

エネルギーを使えば熱が出る。

熱を地球に捨てれば、地球は温まる。

そこで、人類は考えた。

地表を温めなければいい。

熱を地下へ送ればいい。

二四七一年。

超高熱伝導素材が実用化された。

細い管を地球の深部まで伸ばす技術だった。

管の中を熱が移動する。

地表で発生した熱を、

大気へ捨てない。

海へ捨てない。

宇宙へ捨てる必要もない。

地球の内部へ送る。

実験は成功した。

地表の温度は上がらなかった。

海も温まらなかった。

大気も安定していた。

人類は歓喜した。

前の文明ができなかったことを、

今度の文明は成し遂げた。

廃熱問題は解決された。

二四八六年。

エネルギー消費は増えた。

しかし問題は起こらなかった。

二五〇一年。

AIが再び巨大化した。

世界中の計算施設が動き始めた。

核融合炉が増えた。

都市が巨大化した。

海底都市も作られた。

宇宙との輸送も増えた。

それでも、

地表の温度は安定していた。

熱は地下へ送られていた。

人類は安心していた。

二五三四年。

最初の異変が起きた。

渡り鳥の移動経路が変わった。

毎年同じ場所へ飛んでいた鳥が、

数百キロ離れた場所へ向かうようになった。

最初は気候変動が疑われた。

次に餌の変化が疑われた。

感染症も疑われた。

しかし、原因は分からなかった。

二五三七年。

海洋生物に異常が起きた。

サケが川へ戻ってこない。

ウナギの回遊経路が変わる。

ウミガメが産卵場所へ戻れない。

漁獲量が減った。

二五四〇年。

昆虫にも異常が確認された。

ハチの帰巣行動がおかしい。

採餌効率が落ちる。

受粉量が減少する。

農作物の収量が落ち始めた。

人類は原因を探した。

農薬。

病原体。

気候。

遺伝子。

海洋汚染。

あらゆる可能性が調べられた。

しかし、どれも決定的ではなかった。

二五四四年。

船舶事故が増えた。

航空機の航法にも小さな誤差が出始めた。

そして、

方位磁針が狂い始めた。

ほんの数度だった。

しかし世界中で起こっていた。

北が少しずつ動いていた。

二五四六年。

地球物理学者が、ある異常に気づいた。

地磁気が変化している。

磁場の強さ。

方向。

変動。

すべてが過去の記録から外れ始めていた。

調査が始まった。

太陽活動では説明できなかった。

大気でもない。

海洋でもない。

地殻でもない。

さらに深く調べた。

そして、

マントルの温度分布に異常が見つかった。

地球内部が、

少しずつ温かくなっていた。

二五四九年。

原因が分かった。

人類が地下へ送っていた熱だった。

数十年間。

人類は文明から発生する熱を、

地球の内部へ捨て続けていた。

それは大気を温めなかった。

海も温めなかった。

都市も温めなかった。

だから誰も気づかなかった。

熱は、

地球の中にあった。

そして問題は、

そのさらに下にあった。

マントルと外核の境界。

そこでは、地球内部から外へ向かう熱の流れが、

地球の磁場を作る外核の対流に影響していた。

人類がマントルを温めたことで、

その熱の流れが変わった。

外核の流れが変わった。

そして、

地磁気が変わった。

二五五三年。

渡り鳥は、ほとんど正常な渡りができなくなった。

魚の回遊も崩れた。

昆虫の行動も変わった。

農業生産は落ちた。

漁業も崩壊した。

食料価格が上昇した。

人類は食料を奪い合った。

しかし、それでも地球は止まらなかった。

さらに悪いことが起きた。

地磁気の変化が加速した。

磁場は弱くなった。

そして、

場所によって方向そのものが変化し始めた。

人類はようやく理解した。

地下へ熱を捨てることは、

熱を消すことではなかった。

ただ、

地球の別の場所へ移しただけだった。

二五五五年。

人類は地下への熱輸送を停止しようとした。

しかし遅かった。

地下にはすでに、

何十年分もの熱が蓄積していた。

しかも、

停止すれば文明が止まる。

電力を使えば熱が出る。

熱を捨てなければならない。

宇宙へ捨てるには、

以前の文明と同じ問題がある。

地下へ捨てれば、

今度は地磁気を壊す。

人類は二つの選択肢しか持っていなかった。

文明を止めるか。

地球を壊すか。

二五五八年。

地磁気はさらに不安定になった。

二五六一年。

最後の大都市が閉鎖された。

二五六七年。

最後の人間が死んだ。

地球には、

再び誰もいなくなった。

しかし、

地下の熱は残った。

地磁気も、

まだ完全には消えていなかった。

そして、

人類が作った地下の管だけが、

静かに熱を送り続けていた。

人類は、

同じ問題を二度解決した。

熱は消えなかった。

場所が変わっただけだった。

電磁気学によって、人類は滅亡した。

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